169回例会|日本穀物科学研究会ホームページ

日本穀物科学研究会
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<第169回例会・総会>
シンポジウム「最近の小麦粉研究から」
 
 日時 2017年2月4日(土) 13:00〜17:00
 場所 神戸女子大学 教育センター

日本穀物科学研究会

小麦粉食品の加工特性 − 物性と微細構造の関連 −
京都大学大学院農学研究科 教授
松村 康生 氏
 小麦粉食品は多岐に渡り、それぞれのタイプ毎に求められる加工特性も様々である。加工特性の評価および制御を適切に行うためには、物性測定は欠かすことができない。本講演では、いくつかの小麦粉食品を対象として、その加工工程および冷凍などの貯蔵中に生じる物性変化を測定した結果について報告するとともに、その物性変化に関連すると思われる要因の中で、特に微細構造に注目し、微細構造と物性変化がどのように関連しているのか考察を加える。本講演で取り上げる微細構造観察技術は、主に共焦点レーザー顕微鏡と電子顕微鏡であるが、一部新しい観察技術についても触れる。また、分光学的データと物性の関連についても触れる予定である。
1. パン生地
 グルテンネットワークの形成は、多くの小麦粉食品で重要な意味をもっているが、とりわけパンにおいて、その二次加工特性、焼成後の品質に決定的な役割を果たしている。グルテンネットワークを可視化し、その形成状態の時間変化、他の成分との相互作用を検討することが可能になれば、望ましい生地物性や優れた品質のパンを作り出すための基礎的データを得ることができる。本講演では、共焦点レーザー顕微鏡によるグルテンネットワークの構造観察法について紹介する。特に蛍光染色の手法について、通常の蛍光試薬を用いる方法のほか、グリアジン、グルテニン抗体を利用した蛍光染色法についても触れる。また、ミキシングに伴いグルテンネットワークが形成されていく過程で、グルテンの高次構造、すなわちα−へリックスや分子間β-シート構造などがどのように変化して行くのかフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)を用いて解析した結果を報告し、ネットワーク形成の分子論的メカニズムについても考察を行う。また、蛍光指紋法によって得られたデータと生地物性値とを組み合わせて多変量解析を行うことにより、パン生地の物性を予測できるのか、検討した例についても報告する。
2. パスタ・うどん
 パスタについては、同じ原材料から調製したものであっても、その乾燥条件が異なれば、最終的な物性(茹で上げた時の食感)が異なることが知られている。乾燥条件の違いによって、パスタの表面や内部の構造にどのような変化が生じているのか、共焦点レーザー顕微鏡や電子顕微鏡を用いて解析を行った。また、乾燥条件によって引き起こされる物性変化、およびグルテンネットワークの変化が、グルテンおよびその他のタンパク質の加熱変性状態とどのように関係しているのか検討を行った。
 近年、冷凍うどんについては、益々シェアが高まっているが、冷凍によってグルテンや澱粉に生じる変化については、よく分かっていないことが大きい。本講演では、茹でうどんの冷凍に伴う物性変化(堅さ、もろさ、伸展性)を検討するとともに、クライオSEMを用いて冷凍中の氷晶の成長を観察した。また、そのような氷晶の成長がグルテンネットワークや、澱粉に与える影響を解析した。さらに、冷凍中にタンパク質に生じている状態変化を、構造観察と分光学的手法を組み合わせて解析した結果についても触れる。
3. ホワイトソース
 ホワイトソースはグラタン、クリームコロッケ、パスタソースなど様々な調理食品に用いられているが、そのような食品も冷凍保存されて利用されることが多くなっている。ホワイトソースの冷凍劣化については、様々な要因が関わっていると思われる。ここでは、ある種の乳化剤の添加および添加法の違いによって、冷凍劣化抑制に効果が見られる現象を基にして、ホワイトソースに含まれる小麦粉澱粉の冷凍中の変化が、ホワイトソースの冷凍劣化に大きく関わっていることを述べる。

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超強力小麦「ゆめちから」の用途開発と後継の小麦有望系統の育成
農研機構 北海道農業研究センター
長澤 幸一 氏
超強力小麦「ゆめちから」の用途開発
 北海道で開発された超強力小麦「ゆめちから」は、従来品種よりも製パン性に優れ、現在では我が国で最も生産量が多いパン・中華麺用小麦となっている。
 「ゆめちから」は、強力小麦に比べタンパク質含量が高く、超強力型のグルテニンサブユニット組成を持つため、生地にすると弾力が強いという特性を持つ。そのため、単品の小麦粉の使用のみならず、中力粉とのブレンドにより強力粉タイプの用途にも使用できる。澱粉は外麦と異なり、やや低アミロースで有り、もちもち感を特徴とした加工品の開発に向いている。
 近年では、「ゆめちから」使用のパン・麺が商品化され、さらに多方面での開発が進められている。本講では「ゆめちから」の加工特性と特徴を生かしたパン類、麺類、パン粉、醤油、グルテン等の用途の開発について述べる。また、ICT技術を活用した「ゆめちから」の安定供給および品質安定化に寄与するための技術開発についても述べる。

「ゆめちから」後継の小麦の育成
 交配母本として「ゆめちから」は製パン特性や耐病性向上を目的として活用されている。本講では「ゆめちから」後継の多収性の「みのりのちから」、穂発芽耐性を強化した「北海265号」について述べる。

「みのりのちから」
 「みのりのちから」は生産側からの要望が強い「多収性」を育種目標として開発された。収量は、最も収量が高い品種の「きたほなみ」と同程度で有り、農業特性の点で期待が持てる品種である。
 澱粉は「ゆめちから」と同様にやや低アミロースである。一方、グルテニンは生地の強さに寄与する部分は「ゆめちから」よりも硬いタイプである。製パン性はタンパク質含量が同程度の「ゆめちから」よりも優れ、腰折れしにくく、巣立ちが良く、縦方向に伸展して焼き上がる特徴が認められている。「みのりのちから」の中華麺、生パスタは強力粉よりも弾力が強く、茹で伸びしにくいという評価であった。また、グルテンの製パン改良効果にも既存のものよりも優れ、品質改良剤としても期待が持てる。

「北海265号」
 「北海265号」は、穂発芽耐性が改善された超強力小麦である。異常気象により穂発芽被害が増加傾向の北海道では安定供給という点で貢献できる小麦である。「北海265号」の澱粉は「ゆめちから」と異なり通常アミロースであり、国産小麦では少ないタイプである。一方、グルテニンは生地の強さに寄与する部分は「ゆめちから」と同じタイプである。小麦粉の吸水が外麦、「ゆめちから」よりも格段に高く、製パン時に水が多く入る。製パン性は「ゆめちから」並みであり、歯切れの良い食感のパンができる。28年産から品質評価が本格的に始まり、加工適性の実需者評価等からニーズ把握を進めている。
 今後は実需者ニーズを把握しつつ、「みのりのちから」や「北海265号」の交配等から有望な小麦系統を開発していく予定である。

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基礎的なパンの話とパン製造法について
元且R一パン総本店 取締役工場長
植田 哲夫 氏
 過去、日本穀物科学研究会でパンに関する話はされているが、ここでは改めて、日本人の食生活おけるパンの位置と原料、製法について基本的な話をします。
 人間が生きていくために「食物」は必須のものであり、古来、人間は「食物」を加工することによって「美味しく」食べてきたが、「美味しさ」を感じる味覚、感覚、楽しみの心。食物は人体にどのような働きをしているか、また、普段、健康のために留意して食べているものなど・・・・・
 日本の穀物自給率から、将来、必要な穀物は確保できるのかといった問題があるが、日本人の平均寿命の伸びと年齢別人口推移の現状の把握と今後の推計値から考える・・・・・
 多くの穀物の中で小麦(小麦粉)を「美味しく」食べるためにどのような方法があるか、その中でパンは日本人の食生活の位置しているのか、併せて、パンの生産量と生産品目の推移と、日本のパンはどこで作られているか、また、各都道府県主要都市別のパン消費量の比較等。
 パンはどのような材料で作られているか、パンの種類ごとの一般的な標準配合と使用される主原料である小麦粉以外に加えられる各種副原料の製パン上の効果を中心に・・・・・
(なお、原料の各論について、より詳しくであれば日本穀物科学研究会会員の各原料メーカーの専門の方々がおられるので、そちらに委ねたい)
 パン製法は実際にパン生地を作り、生地に触れ、パンを焼いてみないと感覚的に理解しにくい点があるかと思われるが、パン酵母が入手できなかった時代の古くからのパン製法や機械化工場に対応できるパン製法など多くの製法があり、現在、パン業界で最も多く採用されているパン製法の直捏法と中種法について製造工程上の長所、短所や出来たパンの特徴の比較等・・・・・
 パンを美味しく食べるために気を付けたいこと、また、美味しく食べられる期間などについて等・・・・・
以上、パンに対して理解を深めていただければ幸いです。

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