178回例会|日本穀物科学研究会ホームページ

日本穀物科学研究会
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<第178回例会>
シンポジウム「食品製造とロボットの導入」
 
 日時 2019年5月11日(土) 13:00〜17:00
 場所 神戸女子大学 教育センター

日本穀物科学研究会

「食品製造業の生産性低迷の原因と打開策」
テクノバ株式会社
弘中 泰雅 氏
 昨年度は1年間にわたり農林水産省の食品産業生産性向上フォーラムの企画検討委員長として全国8箇所で基調講演をしてきた。食品製造業は生産性が低く製造業平均の生産性の60%しかない。このような現実から農林水産省も食品産業の生産性向上について始めて取り組むことになった。本日は当フォーラムの内容に沿ったミニフォーラムのような会になればと考えている。
 生産性に関しては本研究会との関係が深いパン菓子製造業、麺製造業、水産練り製品などのプロセス(加工)型食品製造業の生産性は残念ながら製造業の平均の50%しかないのが現状である。反面小麦粉製造業、油脂製造業、製糖、調味料製造等の素材型食品製造業の生産性は製造業平均の2倍近い高生産性なのである。従って如何に加工型食品製造業の生産性を向上するかが、食品製造業の生産性を向上させるポイントになる。そこで本日は加工型食品製造業の生産性向上について述べていきたい。
 何故食品製造業、特にプロセス型食品製造業は低生産性になったか、第2次世界大戦後まで遡って考察した。戦後の日本経済は大打撃を受け大変な低迷状態であった。終戦直後には軽装備の食品製造業の生産出荷金額/人は平均より高く、生産性も他製造業と引けを取らなかった。1950年より朝鮮戦争が勃発し、GHQは日本が共産化される事を防がねばならなかった。その為に日本に輸出競争力を付ける必要があった。そこで海外のやり方を学ぶ為に「昭和の遣唐使」と呼ばれる海外派遣団を派遣したが、輸出産業でなかった食品産業は参加する事が出来なかった。多くの産業はこの派遣団で生産管理や品質管理等の先進のマネジメントを学び、企業力を付けまた旧来の考え方から欧米式の考え方に変えて行ったが、食品企業の経営者の考え方は旧来のままであった。
 その後1970年代後半になると第3次産業革命(IE3.0)に入り、トヨタ生産方式などの経営工学が広まっていった。古い体質の食品製造業は吸収することが出来なかった。これらが食品製造業の生産性低下の原因になった。政府も何とか食品製造業の生産性を向上すべく旗を振り、自動化やロボット、IoTなどの導入を促進しようとしている。しかしこれらの技術を工場に導入するには、生産の平準化、1個流し、ロットサイズ等の生産の状態改善が実現されていなければならず。その為これらの新技術が食品工場に導入され成功している例は少ない。
 その原因は多品種少量生産のため切替多発・稼働時間が短い、バッチ生産による脈量生産のため生産平準化ができ難い、食品衛生の条件があり余分な時間が掛かる、製品の多くが消費財で市場の厳しい要求があるなどの問題がある。このような課題を乗り越えなければプロセス型の食品工場の生産性は向上できない。これらの課題を解決するためには食品工場が生産技術力を持つことが必須である。
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神戸屋東淀工場における付加価値生産性向上事例紹介
株式会社 神戸屋
横山 信也 氏
・背景
 食品業界の生産性向上は業界全体の課題となっており、そんな中、弊社でも対前年生産性120%を目指し、弘中氏のご指導のもと改善に取り組む事となった。我が東淀工場は大量生産を効率化されたラインが多く、神戸屋関西4工場の中でも生産性が高かったため、現場の管理監督者は、生産効率は高いと自負していた。実際、弘中氏のご指導を頂く前は、改善することはほとんど無いのではないかという考えを持つ者が多かった。しかし、現場では当たり前と思っていたことも改善の余地ばかりであり、「問題があるのに管理監督者が問題と思っていないことが問題である」とご指導を受けた。問題意識の改善と生産性を上げないと、この先生き残れないという厳しいお言葉とともにご指導頂く中で、管理監督者の考え方が変わっていき、一丸となって生産性向上に取り組むこととなった。
・改善事例
 改善活動をするにあたって指標が必要であり、今回はその指標を『付加価値生産性』に定めた。1人1時間当たりに生み出す、付加価値の金額のことである。この付加価値生産性を上げるためには大きく3つのポイントが挙げられる。1つ目は、生産時間の短縮。時間当たりの生産数、すなわち流量を上げることと、商品ごとに発生する切り替え時間を短縮する事。2つ目は、材料費の管理。製造現場では不良品や廃棄材料を抑え、一方では、商品設計の段階でコストを最小限に抑える事。そして3つ目は、要員削減。単純作業の機械化や、同じ業務を少ない要員でこなす方法を考える事。これらのポイントを抑えながら改善活動に取り組んだ。
大きく効果が出た事例の内、ポイントに沿ったものを紹介する。まず、流量アップの事例として、ケーキ生産の流量の安定化。タクトタイムを設定し、一定の間隔で流す事で安定した流量が確保できた。そこからボトルネックとなるポイントを観察し改善することで、流量アップに繋がった。2つ目にコストダウンの事例。製造現場ではクリームやジャムといったフィリングを配管やホースを通して使用している。生産終了後の清掃の際には、残存フィリングを廃棄せざるを得ないが、その際の廃棄量の多さをご指摘頂いた。レイアウトの変更により材料の無駄を無くす事に成功した。最後に要員削減についての事例。成型作業において、機械で行った作業の修正のための要員配置が適正なのかとご指摘頂いた。設備に工夫を凝らし、修正要員の削減に成功した。また、現場での作業面だけでなく管理面においても、工程管理についての意識改革や、ガントチャートやヒストグラムを用いた要員管理等、重要なポイントをご教授頂いた。
・結果
 2015年7月から始まり、工場として半年後(2015年12月以降)には開始時の110%まで、2017年5月には125%まで上がり、目標であった生産性120%を達成することが出来た。ご指導開始から半年程は、指摘事項を改善するだけの受け身の状態だった。しかし、各職場の管理監督者が自ら問題点を見つけ、改善していくことで、その結果が数字に表れ、達成感が生まれるようになり、それがまた改善活動に繋がるというスパイラルを生み出すことになった。今でもこの姿勢は残っており、さらなる生産性向上に取り組んでいる。この環境を会社全体に波及させ、神戸屋全体の生産性向上に繋げていく。
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天かすメーカーの話
株式会社ナカガワ 
西川 昌宏 氏
 もともと天かすは天ぷらの副産物で、天ぷらを揚げる際に衣の一部が離れて玉状になった物であり、主にうどん、そば、お好み焼、たこ焼に使われていました。近年では某コンビニにて未曽有の大ヒット商品となった「悪魔のおにぎり」にも用いられることで、にわかに具材として注目され始めています。また、海外でも和食文化の広がりとともに天かすの需要が増加してきており、巻きずしの周りにつける等、独自の用途も広がってきています。
 このように天かす・あげ玉の需要が近年高まったことにより、品質が安定しない「副産物」であった天かすにも、一般的な「食品」と同様な品質のレベルを求められるようになってきました。
 当社は天かす専門メーカーという、国内でも希少な業態の会社です。様々な問題やお客様のご要望にお応えすることで、天かす業界では国内トップクラスのシェアに育てていただき、昨年にはFSSC22000を取得することもできました。今回は、天かすメーカーとして、どのような問題やご要望があり、それらにどうお答えしてきたかを主軸に紹介させていただきます。
〇問題
 主な問題としては焦げ・保存性・カサが挙げられますのでそれらの対応をご紹介いたします。
・天かすはフライヤー内の油面に浮いて揚げられていきますが、フライヤー底面に沈んだり、側面に固まったりすると焦げた状態になります。フライヤーの加熱方式により、焦げの発生率は変わります。「直火型加熱方式」から「間接加熱方式」に変更したことにより、焦げについて著しく改善できました。
・天かすは保存性の高い食品で、油で揚げる事により水分活性が低く、再び水分を含まない限り細菌は増殖しません。天かすの劣化は油の酸化によるもので、光・熱・酸素により酸化します。よって、保存性を高めるための方法として@直射日光を避ける。A高温の場所を避ける。B不活性ガス封入で対応しております。また、当社では、天かすにある食品を混入する事で保存性を高める方法の特許を取得いたしました。
・天かすのカサが変わると同じスプーン一杯でも重量が変わり、たこ焼き、お好み焼きに入れる際のコストに関わってきます。そこで当社ではバッター液の温度を15℃以下に保ち、一定のカサになるよう管理しています。季節変動を抑えるため、当社では季節の変わり目に製粉会社に特注で夏用、冬用としてブレンドしてもらい、実機でテストしております。
〇お客様の要望
 天かすの用途は、何らかの食品の部材として使われることですので、用途によって求められる内容が様々です。色、硬さ、味、アレルゲン等での対応をご紹介いたします。
・天かすの色は揚がり具合を判断するための指標となりますので、当社では味噌用測色計により色の範囲を数値化しております。また、もともとの色を濃くするにはブドウ糖など、逆に色を薄くする方法として、小麦粉の灰分値を低い物を使用する方法が挙げられます。赤キャベツ色素を練りこむことにより、pHによって色が変わる天かすを製造する事も出来ました。
・天かすの硬さの要望として、巻き寿司の外側に天かすを付着させ、2時間カリカリ感を維持させてほしいというものがあり、小麦粉とコーンスターチ、ベーキングパウダーでバッター液の粘度を調整して実現いたしました。
・天かすに味を付ける方法は大きく分けて二つあり、揚げる前のバッター液に練りこむ方法と、出来上がってから粉末をまぶす方法に分けられます。それぞれに利点、欠点があり、目的に応じて使い分けています、
・アレルギーについては小麦、エビ、イカが特定原材料等に該当しており、生産のローテーションと清掃、洗浄およびその後の検査によりアレルギー物質の混入を防いでいます。また、小麦グルテンの含まれない天かす製造のために専用ラインを用意いたしました。
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人手不足を救う!生産現場におけるロボット活用事例
株式会社オフィスエフエイ・コム
青木 伸輔 氏
 昨今、あらゆる業種において人手不足が深刻化し、多くの企業における経営課題となっています。また働き方改革など企業に対する生産性向上が求められ、いかに少ない人手で成果を出すかが求められる時代となってきました。
 このような状況において、ロボットなど人手以外の労力に期待する企業が増えてきています。しかしながら、どのように生産性を向上させ、またそのための課題にどのように取り組むかを各企業が独力で見つけ出すのは非常に難しい状況です。
 本セミナーでは、ロボットの導入がもたらす生産現場改革の最新事例と、それに伴って導入時に生じる、ロボット化の課題、ロボット化経験の浅いユーザーが陥りやすい罠、ロボットシステム導入の進め方(2つのブロックと8つのプロセス)など、ロボット導入の手順から最新事例の動画までを具体的にご紹介します。
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