176回例会|日本穀物科学研究会ホームページ

日本穀物科学研究会
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<第176回例会>
シンポジウム「穀類と健康について」
 
 日時 2018年12月1日(土) 13:00〜17:30
 場所 神戸女子大学 教育センター

日本穀物科学研究会

新時代を迎えた腸内常在菌研究 〜健康長寿100歳を目指して〜

特定国立研究開発法人 理化学研究所
辨野 義己 氏

 腸内常在菌が棲息する場である大腸はヒトの臓器の中で最も種類の多い疾患が発症する場でもある。腸内常在菌が直接腸管壁に働き、消化管の構造や機能に影響を与え、各人の栄養、薬効、生理機能、肥満、老化、発がん、免疫、感染などに未知の極めて大きな影響を及ぼすことになり、腸内常在菌の構成とその生理作用に関する研究は現代医療研究のトップランナーに位置づけられている。
 そのような中で、腸内•脳内代謝物への腸内常在菌の機能も明らかにされつつある。それらの殆どは低分子のため腸管粘液層にも浸透し、上皮細胞にも直接影響を与え、腸管からも吸収され血中に移行し全身へ運搬されるため、健康や疾病との関連性は極めて高いと考えられる。一方、腸と脳の間には双方向のシグナルは生体の恒常性維持に重要であり、神経、ホルモン、免疫レベルにおいても制御され、脳の発達や行動にも腸内常在菌の関与が指摘されている。無菌マウスおよび腸内常在菌保有マウスの大脳皮質の代謝物196成分を比較したところ、代謝物のうち23成分(行動と関連深い神経伝達物質であるドーパミン、多発硬化症やアルツハイマー発症に関連性ありとされるN—アセチルアスパラギン酸など)の産生は腸内常在菌により抑制され、逆に、15成分(神経伝達物質の前駆物質である芳香族アミノ酸、総合失調症との関連性ありとするセリン、乳児の脳機能発達に関与するN—アセチルノイラミン酸など)の産生は腸内常在菌により促進されていることが明らかとなった。本成績のみでは、脳の活性化や脳の病気に関わっている神経伝達物質と、腸内常在菌の詳細な関係についてはまだ解析されていないが、脳の健康や疾病、発達と衰弱、学習や記憶、行動などに腸内常在菌が関与している新しい知見が得られている。
 さらに、近年、多様な常在菌を数値として把握する分子生物学的手法である「ターミナル-RFLP解析法」により、大量・迅速解析を可能となっている。当室においても、多数の腸内常在菌を本法により解析した膨大な成績を基に、データマイニング法を駆使して、関係の深い因子群を適確に抽出して、個人属性(性差、体重、年齢など)、食生活や生活習慣、心理的・精神的状態等との関係を統計的に類型化し、予防医学的な知見の蓄積により、健康予防の手段としての活用される事が期待されている。国民の高い健康志向を背景に、体調調節機能と密接な関係を持つ各人の腸内常在菌から得られる情報は、個人別の健康評価や食生活指導法の構築への応用を可能にすることになり、新しい健康予防のあり方さえも変えうる力となっている。

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小麦胚芽摂取が疲労感の発生と持久運動能力に及ぼす影響

京都大学大学院 農学研究科
井上 和生 氏

【目的】 小麦胚芽は小麦粉を生産した際の副産物として生成し、表皮とともに家畜飼料などに用いられたり、その油脂分を抽出して食品やサプリメントとして利用されてきた。近年ではパンやビスケットなどにも積極的に使用され、健康に資するイメージは高い。
胚芽の油脂には長鎖の脂肪族アルコールであるオクタコサノールが含まれ、持久運動能力を向上する効果が報告されているが、申請者が検討した条件ではオクタコサノール単体摂取ではラットで有意な運動能力の変化は認められなかった(未発表データ)。胚芽の油脂成分にはオクタコサノール以外の油脂、脂溶性ビタミン類が含まれ、複合的な作用があると推察される。本申請研究では、食品としての摂取のしやすさや他の成分の寄与を考慮し、単一成分ではなく胚芽として精製飼料に添加し、持久運動能力や疲労感の発生に対しどのような効果を持つかを検討した。
【方法】
飼料:飼料には酵素活性を加熱により失活させた小麦胚芽(ハイギーSP、日清製粉)をAIN-93Gに所定の濃度添加したものを用いた。添加濃度は0%、10%、20%、40%とした(0%群、10%群、20%群、40%群とする)。PFC比を合わせるため、40%群には糖質を補足した。
動物:実験動物はマウス(Balb/c, 雄)を用いた。6週齢で搬入後一週間の馴化期間とし、その間は市販固形飼料(MF, オリエンタル酵母)を摂取させた。その後所定の各飼料を摂取させた。各群のマウス数は、遊泳トレーニング群40%群で5であった以外は、各群4で検討を行った。
トレーニングと運動能力の測定:マウスのトレーニングは遊泳、もしくはトレッドミル走行とし、トレーニング期間は4週間とした。マウスの遊泳には京大松元式改良型流水プールを用いた。遊泳トレーニングは1日おきに週3回とし、各週に1回限界遊泳時間を測定した。走行トレーニングは毎日とし、限界走行時感は実験開始時、トレーニング2週目と4週目に行った。走行トレーニング群を用いて走行運動時エネルギー代謝を呼気ガス測定によって評価した。トレーニング終了後にマウスを屠殺し、臓器重量と肝臓および腓腹筋グリコーゲン量を測定した。
【結果】
遊泳、走行のいずれも小麦胚芽摂取の影響は見られず、各群間での限界運動能力に有意な差は観察されなかった。10%小麦胚芽摂取群ではいずれの運動能力も下がる傾向で、4週めトレーニングでの走行時の呼吸交換比が高く、酸素消費量が高い傾向が見られた。各群での腓腹筋重量に有意な差はなかった。脂肪組織は走行トレーニング群は小麦胚芽摂取で有意な減少を示す部位があった一方、遊泳トレーニング群では脂肪組織の減少は見られず、20%摂取で増大する部位が見られた。グリコーゲン量は脂肪重量と逆の傾向を示し、遊泳トレーニング群で減少が、走行トレーニング群で増大が見られる群があった。
【考察】
いずれの小麦胚芽摂取群、トレーニング群とも摂餌量、体重増加に有意な差はなく、餌がマウスの成長に及ぼす影響はなかったといえる。体組成についてはトレーニングの違いによる影響が見られ、遊泳トレーニング群では肝重量の減少と精巣上体周囲脂肪組織の増大が見られたが、走行トレーニング群では肝重量の変化はなく、脂肪組織重量の減少が見られた。これらは浮力が優位に働く遊泳と体重減少が優位に働く走行との運藤の種類の違いに対する適応だと考えられる。
限界運動時間については、遊泳、および走行のどちらにおいても小麦胚芽摂取の影響は観察されなかった。遊泳は止めると溺れてしまうため、運動能力の限界が反映されるが、走行は止めても生命の危機にはつながらないため、運動する動機が失われれば(疲労感が生じれば)体力は残存していても動物は走行を停止する。本実験結果では、いずれの運動負荷であっても運動時間に有意な変化が観察されなかったため、肉体的疲労、中枢性疲労ともその生成に小麦胚芽摂取は影響しなかったと考えられる。

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米ぬか、小麦胚芽におけるナイアシン活性の解析

滋賀県立大学 人間文化学部
福渡 努 氏

 近年,健康志向の高まりにともなって,ビタミン栄養の重要性が認識されるようになってきた.ビタミンは13種類と数が多いうえに,その性質や供給源となる食品がビタミンの種類によって異なるため,ビタミン栄養状態を評価することは容易ではなく,それゆえにビタミンに関する不安を持つ人々が多くいるようである.食事から摂取したビタミンは,消化,吸収,代謝され,生理作用を発揮し,排泄される.この一連の流れは,食品のマトリクス,食品中のビタミンの形態,摂取量,摂取したヒトの生理状態や遺伝子多型などさまざまな影響を受ける.従来,ビタミン栄養状態を評価するおもな方法として食事調査が用いられてきたが,摂取後の生体の状態については食事調査だけでは知ることはできない.この課題を解決するために,水溶性ビタミンの主要な排泄経路が尿であることに着目し,水溶性ビタミンの摂取量と尿中排泄量との関係を網羅的に調べた.その結果,ビタミンB12を除く8種類の水溶性ビタミンにおいて,尿中の水溶性ビタミンあるいはその代謝産物の排泄量は摂取量と著しく強い相関を示すことを明らかにした.
 水溶性ビタミンの栄養状態を評価に基づいて食事を改善するためには,食事中の水溶性ビタミンの生体有効性を明らかにする必要がある.ヒト介入試験を行い,尿中排泄量に基づいて一般的な日本人の食事,パンを中心とした食事を評価すると,B群ビタミンの生体利用率は遊離型ビタミンの約50〜80%であった.この結果は,ビタミン栄養状態を良好に維持するためには,高いビタミン生体有効性を示す食品を摂取することが重要であることを示している.そこで,個々の食品についてB群ビタミンの生体利用率を明らかにするため,B群ビタミンを豊富に含む小麦胚芽について検討した.ヒト介入試験の結果,遊離型B群ビタミンに対する小麦胚芽中のB群ビタミンの生体利用率および生体利用量は,ビタミンB1では100%,2.0 mg/100 g,ビタミンB6では60%,1.1 mg/100 gであった.動物実験においても,小麦胚芽摂取によってビタミンB1およびビタミンB6が供給され,いずれのビタミンの生体指標が高値を示した.以上の結果は,ヒトが利用可能なビタミンB1およびビタミンB6を小麦胚芽は豊富に含み,これらのビタミンの有効な供給源になることを示している.
 ナイアシンはトリプトファンから生合成されるという点において,他のB群ビタミンとは異なる特徴をもつ.ナイアシン栄養状態を良好に保つうえで,日常の食事からナイアシンとトリプトファンを十分に摂取することが重要である.我々は,トリプトファン−ニコチンアミド経路上のキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPRT)遺伝子を欠損したマウスにナイアシン欠食を与えることにより,ナイアシン欠乏モデル動物の作成に成功した.このモデル動物を用いることにより,トリプトファン−ニコチンアミド経路に依存しないナイアシン栄養状態の評価が可能になる.このマウスをもちいて,ナイアシンを豊富に含む小麦胚芽および米ぬかに含まれるナイアシンの生体有効性について検討した.小麦胚芽,米ぬかに含まれるナイアシンの生体利用率はそれぞれ80%,100%であり,いずれの食品もトリプトファン代謝に影響をおよぼさなかった.この生体利用率とトリプトファン−ニコチンアミド転換率をヒトに換算し加味すると,小麦胚芽,米ぬか100 gのナイアシン活性はそれぞれ8.4 mgNE,34 mgNEとなり,成人のナイアシンの推奨量のそれぞれ60〜90%,2.5〜3倍に相当する.以上の結果は,小麦胚芽および米ぬかはナイアシン供給に有用な食品である可能性を示している.

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小麦全粒粉およびタピオカ加工でんぷん添加パンの機能性について

名古屋文理大学 短期大学部
加藤 美穂 氏

 米文化の日本において、150年以上前の庶民の主食は雑穀や玄米が中心であったが、時代の発展とともに精製された「白米」が主流になっていった。しかし、現代において健康意識の高まりとともに米を含む未精製穀物の栄養的価値が見直されている。
 さらに、「米国人のための食生活指針(2015-2020 Dietary Guidelines for Americans)」においても、穀物の半分は玄穀類あるいは未精製の穀類として摂取するよう推奨している。北米など先進国のスーパーに行くと、全粒粉だけでなくオートミールやオート麦といった日本では馴染みの薄いさまざまな未精製穀物が測り売りされており、日常的に摂取している様子が窺える。
 なかでも小麦全粒粉は、小麦粉と比較して食物繊維を多く含み、ビタミンB群やビタミンE、亜鉛や鉄、マグネシウムなどのミネラルに富む食品である。さらには、グリセミックインデックス(GI)が低く、食後の血糖値上昇を抑制するといわれている。以上のことから全粒粉にはさまざまな機能があり、体内での生理作用について期待が持てる。
 全粒粉の調理方法として代表的なものにパンがあるが、全粒粉のもつ物性の特徴から風味や色、ふっくらと膨らまないなどの製パン性への影響が大きく、多く配合できないといった問題がある。これらの理由から一般的に市販されている全粒粉入りのパンの全粒粉の配合割合は、食感や風味などの観点から数%〜10%程度と少ない。全粒粉のもつ機能性を発揮するためには、より多く配合することが必要である。
 そこで、さまざまな食品の物性の向上を目的として、利用されている加工でんぷんに注目した。加工でんぷんは、老化抑制効果やゲルの物性改良、攪拌性の向上、保水性などが認められ、パン、麺類、畜肉加工品、バッター(揚げ衣)、フラワーペーストなど多くの加工食品に利用されている。さらに米粉パンにおいて、加工でんぷんの配合により物性の向上が認められたとの報告があったことから、全粒粉配合のパンにおいても物性の改良が期待できると考えた。
 また、全粒粉についての先行研究は、物性改良か機能性のどちらかに焦点を当てた報告がほとんどであり、商品化などより多くの人たちに消費してもらうためには、物性および機能性を併せて検討する必要がある。以上のことから、本研究では、加工でんぷん配合による全粒粉パンの物性改良およびその機能性について検討を行った。

本研究の結果の概要を以下に示す。
・加工でんぷんを配合することにより物性の向上が認められた。
・加工でんぷんは糊化した方が、より物性の向上に寄与する。
・加工でんぷんの配合による物性改良には限界がある。
・食物繊維は、不溶性食物繊維より水溶性食物繊維が多く含まれていた。
・健康な若い女性における全粒粉配合パン摂取後のGI値は、グルコースと比較して、全粒粉の配合割合30%では差は認められなかったが、50%では差が認められた。
・フィチン酸は、微量に含まれていた。
・全粒粉中に含まれるリグナンは、HPLCおよびLC/MSでは検出できず、LC/MS/MSを用いての検討が必要である。
・女子大生を対象に行った官能評価では、全粒粉の配合割合30%と50%の間には大きな差は認められなかった。

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2018年AACC International年次大会報告

日本製粉株式会社 基礎技術研究所
大楠 秀樹 氏

 AACCI年次大会は、2018年10月21日〜23日に、英国ロンドンで、約600名が参加して開催された(昨年750名から2割減)。シンポジウム、技術セッション、ポスターの講演と、開会と閉会セッション、基調講演、技術委員会、展示会なども開かれた。日本からは、6名が参加し、4題のポスター発表を行った。
本講演では、北米以外で初開催となったロンドン大会の概要について報告する。

1.今年の特徴
(1)構成上の特徴として、@日曜日から通常のセッションが始まった、A研究所の見学ツアーが開催された、BシンポジウムがFocus Session、Featured Session、Deep Diveの3区分となった、C基調講演が4題行われた、D技術委員会が大部屋で開催された、Eお祭り色が薄らいだ、が挙げられる。
(2)演題の特徴として、@雑穀や豆粉は依然として多い、A構造活性相関が目だった、Bスマート農業など農業分野に近い演題が見られた、が挙げられる。
(3)展示に関しては、少なかった昨年と同じく43社で、@物性の測定機器、A雑穀などの穀類、B添加物などであったが、食品添加物は少ない印象を受けた。

2.新ブランド“Cereals & Grains Association”の投票結果発表。

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3.今年の受賞者

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