157回例会|日本穀物科学研究会ホームページ

日本穀物科学研究会
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<第157回例会・総会>
シンポジウム『食物アレルギーの現状と小麦アレルギー対策について』
日時 2014年2月1日(土) 13:00〜17:00
場所 高津ガーデン
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小麦グルテンの食品における役割、そして、アレルギー対策への取り組み
グリコ栄養食品株式会社
開発部 蛋白研究グループ 村上 哲也
パンや麺といった食品が広く普及しているように、小麦は人々にとって欠かすことのできない食品である。これらの小麦含有食品は、水を加えると粘弾的な物性を発現してドウを形成する小麦グルテン特有の性質を利用してできたものである。機能性とおいしさの観点から、食品中の小麦グルテンを他の食品素材で完全に置き換えることは、困難と言っても過言ではない。また、小麦から抽出したグルテンは、食品の効果的な改質素材としても、様々な加工食品分野において利用されている。小麦グルテン素材の多くは、スプレードライ法やフラッシュドライ法などの方法で乾燥され、粉末状で市販されている。弊社は、小麦グルテンの加工方法をコントロールし、様々な物性タイプのスプレードライグルテンおよびフラッシュドライグルテンを製造・販売しており、消費者が求める様々なニーズに応えるよう、事業活動を行っている。
小麦は多くの食品に欠かすことのできない存在である一方で、日本のアレルギー物質特定原材料7品目の中のひとつでもある。食物アレルギーには様々な症状のものがあるが、その中でも重篤な即時型症状を引き起こすものとして、食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)がある。FDEIAとは、アレルゲンによる感作が成立しているヒトが、そのアレルゲンを含む食品を経口摂取した後、運動負荷などの二次的要因によって誘発されるアナフィラキシーである。小麦のFDEIAはWDEIAと呼ばれ、森田らは、WDEIAの主要な感作抗原はω-5グリアジンが約80%、高分子量グルテニンが約20%と、両者で大部分を占めることを明らかにした1)。しかし最近になって、ある特定の小麦加水分解物を含む洗顔用石鹸を使用した多くの人々が、WDEIAを発症する事態が起こった。これらの患者の多くは、その血清がω-5グリアジンと高分子量グルテニンに反応しなかったことから、従来とは異なるエピトープ配列が感作抗原となっている可能性が示された。この小麦加水分解物含有石鹸によるWDEIAは、洗顔時に経皮的または経粘膜的に感作し、通常の小麦含有食品を経口摂取した際に、体内に吸収された小麦タンパク質が交差反応することによって発症したと考えられている2)。
弊社は現在、島根大学医学部、京都大学農学部、島根県中山間地域センターと共同で、WDEIAの主要感作抗原であるω-5グリアジンを欠失した小麦製品の開発に取り組んでいる。野生種のチャイニーズスプリング1BS-18はω-5グリアジンの遺伝子を欠失しており、この品種を実際に栽培して得られた小麦粒において、ω-5グリアジンが含まれていないことを確認した。しかし、この品種は栽培の環境適応性が低く、生成されるグルテンも物性が極めて弱いことが分かった3)。これらの課題を解決するため現在、国内で広く普及しているパン用品種のホクシンにチャイニーズスプリング1BS-18を交配した、新しい品種の育成に取り組んでいる4)。
1) Morita, E. et al., J. Dermatol. Sci. 33, 99 (2003)
2) 千貫祐子,森田栄伸.皮膚病診療 33, 444 (2011)
3) 平成21年度 新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業
4) 遠藤隆.京都大学産官学連携本部 技術の芽 ライフイノベーション
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ドラフト大麦製品の成分特性と低アレルゲン化食品への応用
神戸学院大学 名誉教授 合田 清
現在、世界の大麦の総生産量は1億4千万トンで米、小麦、トウモロコシについで4番目に多い穀類である。しかし、そのほとんどは飼料および発酵原料として用いられていて、純食用としての利用はわずかである。わが国においても押し麦や、麦こがしなどに加工して、純食用としての利用は全消費量の3%に過ぎない。しかし、大麦の食品としての摂取が健康保持に役立つことが古くから強調されている。1例として白米に大麦を混合することによるビタミン群、ミネラル類、食物繊維の補足効果が提唱されている。特に大麦の水溶性食物繊維の主成分のβ‐グルカンの健康機能性は科学的に検証され注目されている。さらに米、小麦、ソバに比べて低アレルゲン性であり、アトピー児用食材として期待できる。ただ、大麦穀粒の表皮は硬く、胚乳部に密着しているため、加工処理が困難であることが純食品化の1つの障害であった。
この問題を解決するために、われわれは大麦穀粒を簡単に処理する技術、ドラフト分級精粒製粉法を開発した。この方法では改良型酒米用搗精機を使って、生の大麦穀粒を表層部から中心部まで削り、表層部、中間層、中心部と部位別に分別することができる。表層部の主成分は食物繊維で飼料用として、中間層と中心部の主成分はデンプンで、ドラフト大麦製品として中間層「ドラフト大麦粉」は粉食用に、中心部「おばこ麦」は粒食用に利用することを考えている。
このドラフト大麦製品は次のような特徴を持つ。  
1生の大麦製品である。
2ドラフト大麦粉はデンプン粒の大きさまで粉砕されている。
3米や小麦に比べて水分吸着量が多い。
4デンプンは他の植物デンプンに比べて糊化しやすく、老化しにくい。
5食物繊維は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランスよく豊富に含む
6水溶性食物繊維の主成分はβ‐グルカンであり、期待される効用は
@コレステロール・糖の吸収抑制効果による動脈硬化・糖尿病の発症抑制
A善玉菌の増殖促進による腸内環境改善効果で便秘改善、ガン・アレルギー予防及び美容効果
7アレルゲン(アレルギー物質)を含まないことによりアトピー児用食材になる。

さらにドラフト大麦製品を健康食品素材として、またアトピー児用食材として利用するため、それぞれの応用例を紹介する。
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食物アレルギーの症状と治療
アレルゲンを確定し除去する治療、最近の特徴
鈴木診療所 鈴木富美
食物アレルギーは、一般に考えられているよりも、多くの病気や体調の悪さに年齢を問わず、大きく関与しています。あらゆる臓器の病気に食物アレルギーが関わっていると言っても過言ではないと思っています。
通常の医療では、症状から診断へ、そして治療へと向かいます。その場合の治療は、外科系は別として、薬剤の治療が中心になります。
食物アレルギーの治療をやっていてよかったと思うことは、発病に至る原因は何かと問うことができ、大抵の場合、関与している食物アレルゲンを明らかにすることができること、除去することによって、別様の治療方法が可能なことです。1つ1つの対症療法に比べて、身体全体の体調をよくすることができます。
ところが、一方では、病気の原因としての食物アレルギーがわかりにくいのです。
それは、次のようなことが原因と思われるのです。

1.食べ物が、病気の原因となるということへの疑い
2.アレルギー反応のタイプが1つではない
   IgE(即)と非IgE(IgA,M,G,リンパ球)
3.IgE即時型もマスクされるとわからない
   毎日食べていると症状との関連がわからない
   5日以上間をあけると症状がでやすい
4.検査項目(種類)が、数多くのアレルゲンに対応できていない
5.食物自体が、単純ではなくなってきた
   農薬、添加物、殺菌、除菌、放射能汚染など
6.身体自体が、日々変化しているため、反応がおきたり、おこらなかったりする
7.食生活や環境の変化で、アレルゲンが増加している
8.スイッチ現象がある。(強いアレルゲンにさらされると、他の反応が消える)

以上のわかりにくさを克服していかなくてはならないのですが、患者さんの協力と同時に、 
O-RINGテストを、IgE検査と併用することによりアレルゲンを確定し、治療を効果的にすることができると思います。
 O-RINGテストでは。物の持つ波動情報を皮膚から受け取り、その情報に対する体の反応を筋力の強弱で判断するものです。アレルゲンは何なのか、病変部に存在しているアレルゲンは何か、また除去の程度は適切かなどがわかります。
 アトピー性皮膚炎を例にとって、アレルゲンの状況を見てみます。
アレルゲンとして多いのは、年齢によって大きな違いは無く、牛乳、卵、肉、甲殻類、香料です。食物以外では、羽毛、動物の毛、花粉、合成洗剤、放射性セシウムなどです。穀類では小麦がやや多く、米、ソバはほぼ同じくらいです。穀類では精製していないものがアレルギーを起こし易いのです。米アレルギーでは、玄米、胚芽米、白米、酒米と順に抗原性が低下します。小麦アレルギーでは、麦芽や強力粉にアレルギーが起こりやすく、次いで中力粉、薄力粉、低蛋白小麦粉となります。粟、稗、黍などの雑穀もアレルギーが起こりやすく注意して使用しなければなりません。総じて栄養豊富な穀類を取るときには、量を少なく良く噛んで野菜類中心の副食でいただくのが良いようです。
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